とん汁桝形は、昭和28年創業。
当時のお客様には、建設や土木など体を使って働く人たちも多く、昼休みの限られた時間に、しっかり腹を満たせる食事が求められていました。
そこで桝形では、温かいご飯ととん汁を用意し、そうざいはあらかじめ店頭に並べ、好きなものを自分で選ぶかたちに。
注文してから料理を待つのではなく、食べたいものを選び、ご飯ととん汁を受け取って、すぐに食べられる。現在まで続く桝形のスタイルは、そんな食堂として始まりました。

桝形のとん汁の具は、豚肉、豆腐、ねぎだけ。
大根やにんじんなどの野菜は入れません。とん汁では豚肉、豆腐、ねぎ、味噌、だし、それぞれの味を楽しんでもらう。それが桝形の考え方です。
だしには毎日火を入れ、仕込みには三日をかけます。
最後に味噌を合わせ、豆腐にも必要以上に火を通さず、少量ずつ鍋を分けながら仕上げていきます。
具材は驚くほどシンプル。その分、一つひとつの味をごまかせないのが、桝形のとん汁です。

とん汁の味を決める味噌は、一種類ではありません。
産地や特徴の異なる数種類の味噌を合わせ、季節に合わせて配合も調整します。
昔から同じものを、そのまま出し続けるのではなく、変えるところは変えながら「桝形のとん汁」の味を守っています。

豚肉と並んで、とん汁の主役になるのが豆腐です。
桝形では、とん汁に合う豆腐を求めて、豆腐職人と一緒に豆腐づくりまで考えてきました。
絹ごしでも、木綿でもない。とん汁の中での甘みと弾力、食感を考えた豆腐です。
その持ち味を残すため、仕上げの際にも必要以上に火を通しません。

とん汁と同じくらい大切なのが、ご飯です。
米は地元の農家から仕入れ、水には天竜川水系の井戸水を使います。
桝形では、一度沸かした湯を使って米を炊き上げます。お客様の入り具合を見ながら炊き、なるべく炊きたてを。
大・中・小・少々から、お腹の具合に合わせて選んでください。

魚の煮付け、刺身、揚げ物、野菜の煮物、サラダなど、そうざいケースを見て、その日に食べたいものを自分で選ぶのが桝形のスタイルです。
決まった定食ではなく、ご飯ととん汁の大きさも、そうざいも自分で選ぶ。
さばの味噌煮、煮込みハンバーグ、イカフライ――。
一見何気なく並ぶそうざいにも、それぞれ桝形ならではの仕事があります。
